五條市人権教育推進協議会について

2019年度 活動方針

はじめに

 本年は、「同和対策事業特別措置法」が1969年に制定されて50年の節目にあたります。この法は、部落差別の解決が「国の責務」であり、「国民的課題」である、と位置づけた同和対策審議会答申(同対審答申)に基づいて、1969年に10年間の時限立法として制定されました。その成立には関係者の熱い思いと今後への期待が込められていました。法のできる前と後では社会の部落問題に関する認識も大きく変化しました。その後2002年まで33年間、新たな法律へと引き継がれながら住環境などハード面では大きな成果を上げました。

 しかし、差別事象は後を絶ちません。さらに、かつては予想もしていなかったインターネット上の差別的な内容とそれに同調する書き込み、「差別主義者」を堂々と名乗り、差別言動を繰り返すヘイトスピーチ、ヘイトクライムなど、差別行為や差別を煽る行為などの新たな人権問題も惹起しています。

 そのような中、2016年に「部落差別解消推進法※1」「障害者差別解消法※2」「ヘイトスピーチ解消法※3」の『人権3法』が施行され、さらに2016年に公布された「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保に関する法律(教育機会確保法)」が2017年に施行されました。また、奈良県においても個別の人権条例として、「奈良県障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会づくり条例」や「手話言語条例」が施行されています。さらに、本年3月22日には、「奈良県部落差別の解消の推進に関する条例」が公布・施行されました。これは都道府県単位では全国で2番目、また部落差別解消に向けての新たな条例としては、奈良県が初となります。これらの法律・条例は、理念法ではありますが、「人権侵害救済法」への道筋をつけるもので、差別解消への法的な方向性を明確にしたことは言うまでもありません。

 しかし、上記で述べた人権の条例・法律は、まだまだ全ての人に認知されていません。これらを活かすために、あらゆる機会を通じて周知と理解を求めていきましょう。そして、奥田均さんが「『同対審』答申を読む(2015年解放出版社)」で述べているように、「健康増進法が制定され、あれよあれよという間に『禁煙の世間』が形成され、喫煙者には肩身の狭い社会が見事に創り上げられた。同様に差別禁止法は、差別をする者にとって肩身の狭い『人権の世間』づくりに大いに貢献する」ことにならなければなりません。私たちはこれらを、差別をなくす力として、「人権尊重のまちづくり」に向かって取組を進めましょう。

研究課題

差別の現実に深く学び、部落問題をはじめ、あらゆる人権問題の解決をめざして、くらしをみつめ、豊かな未来を切り拓く取組を進めよう。

1.市人推協加盟機関・団体独自の取組を充実させよう

 現在、市人推協は39の機関・団体によって構成されています。例年市人推協の活動の基盤としながら、人権確立をめざす取組を進め、人権意識を高めてきました。さらに積極的、主体的、具体的な差別の解消を実現するための行動をもう一歩進めるために、学習会・研修会などそれぞれの取組を〈計画・実行・ふり返り・改善〉というサイクルで見直し「これからどうする」「どうしたらもっと良くなる」「次にどうしたらいいのだろう」と考えて実践につなげていけたらと思います。今後も、それぞれの機関・団体等との連携・協働を積極的に図り、交流と議論を深め、更なる充実と広がりを生み出していきたいと考えています。

2.人権問題の解決をめざして

 世界ではテロや紛争、内戦など非常に緊迫した状況にあり、国内においては、経済格差の拡大と固定化が進み、貧困問題が大きな社会問題となっています。その中で、幼児や児童に対する虐待やDV、高齢者に対する人権侵害、「障がい」者や外国人に対する人権侵害や差別が惹起し、「ハンセン病問題」では、今なお多くの方の心に大きな傷を残しています。また、東京電力福島第一原発事故以降の福島の人々に対する偏見や差別、ようやく認識され始めた性的マイノリティ※4の問題など、取り組むべき課題が山積しています。

 さらに、公衆の前で公然と特定の相手を誹謗中傷する「ヘイトスピーチ」(差別的街宣活動)が顕著になっています。しかし「ヘイトスピーチ解消法」が施行され、その活動の差別性を指摘する判決が出されていますが、抑制されたというまでには至っていません。

 また、「部落差別解消推進法」第一条で「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ」と述べているように、インターネット上での差別事象や人権侵害が後を絶ちません。

 激動する現在社会の中で生み出される様々な形態の人権侵害の現実を捉え、私たちは問題解決に向けた実践を粘り強く続けて行きたいと考えています。

3.「人権尊重のまちづくり」の必要性を認識することから

 近年、女性・子ども・高齢者・「障がい」者・外国人とその家族などへの差別発言・落書き・虐待や暴力などの地域における「社会的弱者」の人権が脅かされる状況が深刻化しています。

 そのような状況の中、国の「障害者差別解消法」と、奈良県における「奈良県障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会づくり条例」が施行されていますが、その意義はまだ広く認知されていません。すべての人々が地域社会で共に学び、働き、生きるためにその「社会的障壁」を取り除き、あらゆる人が孤立したり、排除されることのない、共に生きるためのインクルーシブ※5な社会づくりが求められています。

 地域や個人によって具体的な人権課題には違いはありますが、自分の地域や職場にどのような人権課題があるのか、日頃から自身の人権のアンテナを張り巡らすことにより見えてきた足もとの問題を地域の課題として、差別をなくしたいと願う住民一人ひとりの活動をつないでいきましょう。「生きがい」「働きがい」を実感でき、そこに住んで良かったと思える地域社会をめざして、住民の「絆」を結び直していく取組を進めていきましょう。その活動は広く「人権尊重のまちづくり」につながるものです。

4.人権教育地区別懇談会(地区懇)の果たす役割と今後の方向性

 私たちが長年の取組の中で生み出してきた地区・校区別の人権教育地区別懇談会(以下、地区懇)の、一人ひとりが人権課題に向き合う学習スタイルは、人推協の財産といえるものです。地区懇の目的は、人権問題を身近な問題としてとらえ、自分にできることから行動に移すことができる人づくり、温かな人間関係づくりです。その地域に暮らす人たちが、身の回りにある様々な差別や偏見に気づき、自分との関わりについて考え、語り合い、自分たちの地域社会を人権の視点で、より暮らしやすいものにしていく「住民運動」の場として、今後も地区懇を大切な柱に据え、「差別をなくす学習から差別をなくす行動へ」の目標のもと、人と人とをつなぐ地区懇・研修会を実施する工夫をし、地道に取組を進めましょう。

5.毎月11日の「人権を確かめ合う日」の取組を広めよう

1989年4月11日を起点とし、市町村同和問題啓発活動推進本部連絡協議会が毎月11日を「人権を確かめ合う日」と設定・提唱し、昨年30年の節目を迎えました。
 この「人権を確かめ合う日」は、人権侵害を許さない社会的な気運を高め、部落差別撤廃・あらゆる形態の差別撤廃への世論を高める役割を担ってきました。
 これからも、一人ひとりの基本的人権の確立と差別意識をなくしていく活動を、自分自身の課題として、だれもが「かけがえのない存在」として生きていける、「人権尊重のまちづくり」のために取組を続けましょう。

脚注

※1 部落差別解消推進法とは、部落差別の解消の推進に関する法律(2016年12月施行)

※2 障害者差別解消法とは、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(2016年4月施行)

※3 ヘイトスピーチ解消法とは、本邦外出身者にたいする不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(2016年6月施行)

※4 性的マイノリティとは、セクシュアルマイノリティ。性的嗜好、性自認、LGBT、性別表現において「典型」あるいは多数と異なる性の有り様をもつ人達の総称。

※5 インクルーシブとは、あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合うさま。

2019年度 事業計画

2019年度 事業計画の詳細
種類 内容 期日 場所
研究・研修 第44回夏期研修会 8月28日(水曜日) 奈良県社会教育センター
研究・研修 第52回 奈良県人権教育推進協議会研究大会 9月21日(土曜日) かしはら万葉ホール 他
研究・研修 助言者・加盟機関・団体長・事務局長合同研修会(指導者養成講座) 10月初旬 中央公民館
研究・研修 市人推協加盟機関・団体長視察研修(泊) 未定 未定
その他 差別をなくす強調月間街頭啓発 7月中  
その他 第48回 差別をなくす市民集会 7月13日(土曜日) 市民会館
その他  その他関係集会に参加    

関連情報

この記事に関するお問い合わせ先

教育委員会事務局 生涯学習課
電話:0747-22-4001
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更新日:2019年06月10日