五條十八景、詩と画

第一景「葛城夕嵐」

葛城山には白雲がたちこめ
岩橋の上にお立ちになっている女神の姿は見るすべもない
夕方急に晴れてきてもやが消えて
俗世界に流れてきて、旅衣をしっとりしめらすことよ

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第二景「高峰秋月」

多くの山の中でこの山ほど尊い山はない
山の姿が富士山に似ているので人々は小富士と呼んでいる
雪を頂き扇をさかさまにしたようなこの山が
月に照らされ空高くそびえている姿はまったく富士のようだ

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第三景「大嶺積雪」

昔、山の神々が駆け巡ったためにこんなに険しくなったのか
雪に蔽われ銀の屏風を立てたような山の高さよ
雲にかけられたはしごも鳥の飛び行く道も尋ねるすべもない
ただ独り仙人が鶴に乗って飛んでいくだけである

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第四景「勢堂紅葉」

風の激しい霜の降りた朝、秋の景色を求めて過ぎていく
秋のころになると楓の林が輝くばかりに紅葉する
日が落ち残りの霞につつまれたしずかな寺の夕暮れ
出会う人たちごとに落日の光が顔に映えて酔顔に見まちがえる

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第五景「高取孤城」

天にもそびえる城の壮観さ
その偉大な姿は天をもしのぎ、星の寒々と輝く空高くそそり立っている
退之は籐王の願いに報いることができたかどうか
私は今、試しに城山の景に向かって筆を揮ってその壮観さに見入っている

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第六景「芳野川筏」

多くの木をつなぎあわせた筏(いかだ)が今やっと渡し場についた
はるかに流れる吉野川に桜の花が限りなく散りゆく
筏師は世を恨まず、人をうらやむこともなく
毎年毎年、芳野の春を楽しみながら悠々と過ごしている

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第七景「湯川遠村」

湯川は昔から有名な村里である
遠く村里を望むと、かすかにけむる靄(もや)の中にうるんでいて
草や木々、家々の姿が時々見え隠れしている
私は馬を駆って杏の花の咲く美しい村を訪ねる

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第八景「二見耕人」

麦の穂が青々と風になびき、夏の日が長々と照っている
耕す手もすっかり疲れ、汗は水のように滴り落ちる
道行く人に年老いた農夫の気持ちを聞くことができた
世渡りに追われ、農業に忙しく、毎日あくせくと暮らしている

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第九景「大善寺桜」

曲がりくねったこんな木の姿に誰が作りあげたのであろう
今を盛りと咲き誇る桜の花がそこに建てられたお寺を照らしている
夜通し降った雨を送って白龍(桜の花)が姿を消して
ひらひらと美しい鱗(うろこ)のような桜の花びらが夜明けの風に
ひるがえりつつ散っていく

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第十景「千早樵夫」

霧が立ち込め雲の行き交う山に分け入り、木を伐る仕事をしている樵夫(しょうふ=きこり)は、身も世も静かである
南朝の歴史を秘めたこのあたりの風物が夕陽の中で栄枯の夢を漂わせている
しかし、樵夫には南朝の興りすたれはまったく分からない
ほろ酔い加減で一曲口ずさみながら、月に乗ったようなうきうきした気分で山を下っていく

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第十一景「富山牧牛」

そこはあたかも桃源郷のような美しい牧場、初めてそこに牛が放たれた頃
一群の牧牛、小牛が静かに清らかな泉の水を飲んでいた
ここの牛たちは神の犠牲にもされないでいつまでものどかな鳴き声をたてている
そして腹いっぱいになれば、豊かな草、深い林の中で自然と眠りにふけるのである

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第十二景「犬飼駅馬」

誰を送り誰を迎えに来たのか、宿場のあたりには人々が右往左往している
北から来、南へ去っていく旅人たちはどこへ行くのであろう
馬にまたがり春風に吹かれつつ旅人たちは去っていく
その旅人に道端に咲く梅の一枝を別れのしるしに送ろう

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第十三景「御霊古祠」

松や柏の繁った森の木陰に静かに鎮座まします神の社がある
昔からおまつりされている神の御霊はこの付近の人々から敬慕されている
琴の音色を聞くまでもなく神前に額づくと、清らかな気持ちが湧いてきて
秋風に吹かれ皎々(こうこう)と照る月のもとで、別天地に遊ぶような気持ちになる

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第十四景「栄山瞑鐘」

靄につつまれた山の木々、川にはぼんやり霞がかかっている
風に途切れ聞こえてくる鐘の音、雲のかなたのねぐらに帰る烏が鳴きながら飛んでいく
鐘の音にも鳥の声にも、行く春を惜しむ哀調が身にしむ思いがするが、行く春を止める何の手立てもない
夕陽が沈もうとする頃、寺の門のほとりの桜の花はすっかり散り落ちてしまった

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第十五景「城山夕照」

石の階段にまつわりつくかすかな蔦も雨にぬれて青々としている
古い城にはすむ人もなくなったまま、長い年月が過ぎてしまった
夕陽の沈む山、それはまた雲の宿りでもある
二羽の白鳥が横切って飛ぶ様を描いた屏風のような風景

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​​​​​​​第十六景「鴬井納涼」

お椀の中に落ちた月影が冷たく凍りつきそうだ
夜明けの月影のなんと円く涼しいことよ
天上から降りてくる金色の露
このような風景に浸っていると俗世間を離れた清らかな心に浸ることができる

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第十七景「野原柴橋」

白い砂の色、緑色の瀬の流れにも寒々とした感じを呼び起こす
川原は霜に覆い尽くされ、流れには靄が立ち込めて青い苔の色もまだ見えない
雪を踏んで馬の足跡を頼りに時々橋を渡っていく
梅見の人がかすかに梅の香りを漂わせて帰っていくのに出会う

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第十八景「牧瀬漁網」

蓼(たで)の花咲く秋の頃、鮎が川を下っていく
日が落ちる頃漁人たちが川の岸辺に集まってくる
景色の優れた松江の雨の中で、釣り糸をたれる蓑、笠をつけた翁は季鷹の風流を真似ることができるだろうか、どうか

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更新日:2019年01月07日